曳山の曲り方
曳山は自動車の前輪のように車体を曲げる装置が付いていないため、 角を曲がるような場合は、山に備え付けてある「前でこ・後でこ」を押して強引に向きを変えます。もちろんてこ係りが持つ 小でこも使います。
前・後両方のてこは十数人が渾身の力をこめて押さないと山は動き出さないので、一旦動き出せば 一気に回してしまいます。大きな掛け声のなかで地響きのような音をたてて回る曳山の姿も隠れた見どころのひとつです。 他の曳山祭りでは竹などを敷いたりして回しやすくするようですが、松翁山の場合は基本的に何も敷きません。 アスファルトに車輪がめり込んだり、人数がよほど少なくて回せない時は鉄板を車輪にかませます。
てこは前・後均等に使えば山の中心を軸に回転しますし、前だけの場合は後輪を軸になるように前が大きくまわります。また上段の写真のように狭い街中では回せるスペースも限らているため、山を止める場所も重要。回転するスペースや障害物を考慮したうえで、前、後の配分を考えて回します。これらの指示は全て筆頭総代から出されます。左の画像のように10センチ程のスペースを残してこの位置から回転させます。
蛇行している道では山を引きながら前でこを使って方向を調整します。 舞台方から伝えられる指示に従って、てこの右や左に移動しながら、全力で肩を入れないと向きを変えてくれません。 3日間これをやり続けると肩はあざのように色が変わってしまいます。
神前や山倉前のように地面が土の場合は回そうとしても地面に車輪がめり込んでしまい 動かなくなります。こういう場合は「大でこ」と呼ばれる数メートルのてこを使います。大でこの使い方は一般的なてこと同じで、 支点になる部分に大きな木の台を使い、曳山の下に大でこを当てて前輪を浮かせ更に回転をさせることで向きを変えます。
大でこは大人数人が飛びつき、上に腰かけてしまい横にスライドさせます。一度に動く量は少なく地味な動きですが 大きな曳山が完全に浮いてしまう巨大なてこもめずらしい物だと思います。ちなみに移動中、山の後ろ側から突き出ているのが 大でこです。